一巻完結

「単行本 全1巻」という言葉は,作品の打ち切りを連想させるネガティブな言葉と捉えられがちです.

しかし,「一巻完結」の作品は良作であることが多いのです.

単行本が1巻しか出ない作品には2パターンあります.1巻で作品が完結する場合と,連載を続けても2巻以降が発売されない場合です.4コマ漫画は後者の場合が非常に多いです.

前者の「一巻完結」の作品には明確なラストが存在します.そして1巻に全てが収まっているためにテンポが良く,作品の軸もブレません.

だからこそ,一巻完結の作品には良作が多いのだと思います.

しかしながら,一巻完結の作品はどうしても知名度が低いのですよね.

 

そこでこのページでは,一巻完結の隠れた名作を紹介します!

「メジャー作品はもう知ってるよ」という4コマファンにこそ知って頂きたい作品です.

なお,紹介順は作者名順としました.


薄命少女 あらい・まりこ/双葉社

 余命一年と宣告された高校生,佳苗に残された最後の1年間を描いたヒューマンドラマです.「切なすぎる漫画」としてネットで度々話題に挙げられるのを目にします.佳苗の母は佳苗を産んで間もなく病死しており,父が一人で佳苗を育ててきました.父は娘を死なすまいと,僅かな望みをかけた手術の費用を稼ぐため,死に物狂いで働きます.そんな父の姿を見てつらい思いをする佳苗に,さらに追い打ちをかけるように悲しい出来事が重なるのです. 4コマ漫画としては非常に重いテーマを扱っており,終盤の展開はなかなかショッキングです.シリアスな内容をギャグで和らげようとしている部分は少し強引に感じますが,そんなことを忘れさせるほど,物語のラストが印象的です.


オーケーFANTASISTA! 口八丁ぐりぐら/KR

 剣と魔法のファンタジーな世界で,主人公達のパーティは魔王を倒すための冒険に出かけます.パーティのメンバーは,へっぽこ魔導師のロック,格闘家のアリス,変態剣士のカタビラ,魔王のスパイのトキワです.きらら作品の中でもかなり古い作品で,萌えよりもギャグがメインになっています.笑いの発生源は,何と言ってもカタビラさん.彼は「魔法陣グルグル」におけるキタキタおやじ的ポジションのようですが,実は超重要人物だったのです!ラストの展開がとてもよく出来ていて,一巻完結ながらファンタジー作品として美しくまとまっていると思います.


やさぐれ人魚伝説 マーメイドブルース 小池田マヤ/竹書房

 「♪人はどうして悲しくなると 海を見つめに来るのでしょうか~」 南の海を訪れた人々が,海に沈めた未練や悲しみ.そんな想いを泡に変え,溶かしてあげるのが,本作の主人公である人魚さんの役目です.切なくも温かい話を軸にしていますが,毒気のあるギャグも多くてクスリと笑えます.中盤までは1話完結のショートストーリーで話が進んでいくのですが,ある時突然の暗転・・・ そこから真のストーリーが始まるのです.ここでネタバレはしませんが,かなり驚きの展開ですよ.本作は若い人向けではないかもしれませんが,とても味わい深い作品です.(イカって言ったよ!)


モノローグジェネレーション 小坂俊史/竹書房

 中学生からお婆さんまで,様々な年代の女性たちの心の声を描いた作品です.「中央モノローグ線」,「遠野モノがたり」と続いた「モノローグ3部作」の最後の作品でもあります.1話毎に「ケータイ」,「夏休み」といったテーマが設定され,そのテーマに沿った4コマが各キャラクターごとに1本づつ掲載されます.(中学生のひとみのみ,1話につき2本.)ちょっぴりしんみりしてしまうエピソードが多く,様々な読者の胸に刺さるような話が散りばめられています.本作に登場する各キャラクターには繋がりがなく,淡々と作品が進行しているように思いますが...最後の最後でサプライズが!


ソーダ屋のソーダさん。 湖西晶/ぱれっと 紹介ページ

 本サイトのお気に入りコーナーで,私が真っ先に紹介したイチオシの作品です.一見ごく普通に暮らしているように思えた姉妹ですが,姉の沙和は心臓が止まっている.そしてこの姉妹にはもうひとつ驚くべき秘密が隠されていて...作品の中盤まではコメディ調で描かれていますが,実はそこに伏線が散りばめられているのです.そして終盤ではムードが一変し,スリルが一気に加速.私が読んだ4コマ作品の中で,これほどドキドキワクワクした作品は他にありません.最後の最後まで物語の結末が分からないのですが,この本を読み終えた時には清々しい読了感に満たされます.


ソーダ村のソーダさん。 湖西晶/ぱれっと

 4年前,左右田村の左右田神社が火事で焼失し,4人の犠牲者を出しました.その後村自体がダムの底に沈み,左右田村は人々の記憶からも消えつつあったのですが...新米ジャーナリストの果子は心霊モノのゴシップ記事の取材のため,左右田村が沈んだダムの近くにやってきました.しかし果子はそこで崖から転落し,目が覚めると4年前の左右田村にタイムスリップしていたのです.果子は焼失する前の左右田神社に住まわせてもらい,火事を防ぐとこを決意します.しかし,そこで果子は知ってしまったのは...前作「ソーダ屋のソーダさん。」の続編ですが,物語の繋がりはありません.そして前作よりもストーリーがより複雑かつシリアスなものになっています.4コマ漫画ではあまり例を見ないサスペンス作品で,物語中盤には死者が出る衝撃の展開となっています.伏線も多く張られているので,何度も読み返したくなります.


新・自虐の詩 ロボット小雪 業田良家/竹書房 紹介ページ

 そこは,ロボット技術が発達した世界.人々は豊かな暮らしを送り,恋人ロボットを持つのが当たり前になっていました.高校生の拓郎も,小雪という名の恋人ロボットを持っていました.拓郎は友人と毎日楽しく遊んで過ごしていましたが,その平和な世界は大きな闇を抱えていたのです.いつしか心を持つようになった小雪は,この歪んだ世界を変えるべく,ある計画を実行します...! 非常に濃密なストーリーとメッセージ性に,私は心が震えました.この衝撃を,もっと多くの人に味わってもらいたい.4コマファンの方も,そうでない方も,ぜひ読んでみてください!


オンノジ 施川ユウキ/秋田書店

 突然,世界から人々が消えてしまった.唯一残された少女ミヤコは,一人遊びを繰り返して過ごしていました.ある日ミヤコは,誰もいないと思っていたこの世界で1羽のフラミンゴに出会います.フラミンゴの正体は,何故か姿を変えられてしまった少年.彼はミヤコによって「オンノジ」と名付けられ,1人と1羽の生活が始まります... 作品設定がとにかく異色のこの作品は,様々な謎に包まれています.何故世界から人が消えたのか?何故オンノジはフラミンゴになったのか?実は,これらの謎に対する答えは作中に用意されていません.でも,それは別に問題ではないのです.私は最終話のミヤコのセリフを読み,ミヤコの高揚感がひしひしと伝わってきました.それだけでも私はこの作品を買って良かったと思います.本作を読んでどう感じるかは人それぞれだと思いますが,とにかく一度読んで頂きたい作品です.


ヨルとネル 施川ユウキ/秋田書店

 身長11cmの少年,ヨルとネル.二人は「実験体」として閉じ込められていた研究所から逃げ出し,誰にも見つからないように逃避行を続けています.クールで行動的なヨルと,おとなしい性格のネル.二人は固い絆で結ばれていて,仲良くふざけあいながら非日常の毎日を過ごしていきます.普通の人にとっての日常風景も,小人にとっては危険がいっぱいなのです.前作「オンノジ」と近い作風ですが,こちらの方がかなりシリアス.最後の展開では,度肝を抜かれること必至です.

まさか...嘘でしょ......「うわあああぁぁぁぁ!!!」


ぼくの奥さん 樹るう/双葉社

 リーヨンで暮らす貴族の末っ子ルイは,突然親に結婚相手を決められました.お相手は伯爵家の一人娘,キャロ.しかしキャロにはとんでもない秘密があって,10歳まで狼に育てられた娘だったのです!最初はキャロに威嚇されてたじたじのルイでしたが,なんとかキャロに懐いてもらうことに成功します.しかし今度は野性味溢れるキャロに振り回されてヘトヘトの毎日が始まるのです.キャロとの仲が深まったルイは,やがてキャロが狼に育てられる発端となった事件の真相を知ることになり...ちょっぴりシリアスな展開も含む本作ですが,全体的にはハートフルコメディー作品です.最後はもちろんハッピーエンドを迎えるのですが,もう少し続きを読みたかったかな?とも思います.