とある商店街にある豆腐屋，北原豆腐店を営む大将と，その3人娘を主人公にした作品です．頑固な職人の父・侘助，しっかり者の長女・梅乃，気分屋の次女・桃子，純真高校生の三女・桜．ある日，お嫁に出ていた桃子が「離婚した」と言って家に戻ってきたところから，物語がスタートします．

　タイプの違う北原家の人々ですが，豆腐を愛する気持ちは一緒です．本作では，常に豆腐とともにある北原家の日常，そして商店街の仲間たちの騒動を楽しく描いています．さらに，桜に片思いしているクラスメートの南田と，大阪から来たたこ焼き屋の前田の桜をめぐる水面下の戦いも．

　商店街には「Sネット」という会があり，商店街の清掃や治安維持などの活動をしているのですが，梅乃にいいところを見せることが目的の会でもあります．少しボケた会のようにも思えますが，その設立にはシリアスな経緯があって...

　単行本の巻末には，毎回過去のエピソード（非4コマ）が収録されています．感動的な内容ばかりで，涙腺の弱い方は感涙必至です．

　親しみやすい題材で，誰でも安心して読めることができて，読了後は優しい気持ちになれる・・・！これぞ，正統派タイム系4コマの良作です．本当にもう，「いい話」ばかりなんですよ．

　本作の注目すべき特徴が，梅乃にまつわる伏線です．物語のラスト付近で衝撃の展開があるのですが，実はそこに至る伏線が1巻から小出しされていたのです．連載期間で言うと数年がかりで伏線が回収されたわけですから，この細工はお見事．

　また，水谷先生の描く登場人物のイラストは最初から最後までほとんど変化しません．安定した作画で，優しさに溢れた画風は作品とよくマッチしています．総じて絵のレベルが高い方だと感じます．

私が選ぶ

ザ・ベスト

3巻巻末「桃子のよめいり」

桃子の結婚式前日のエピソード．4コマではなくショートストーリーなのですが，内容も構成も素晴らしいです．

この作品が

好きなら！

さくらんぼ。／芳原のぞみ（タイム）