内容 |
売れない作家・雄二と彼を支える妻・街子の夫婦愛を描いた作品です. 雄二は仕事に煮詰まるとすぐに酒やギャンブルに逃げる,だらしのない性格です.街子はそんな雄二の尻を叩きつつ,八百屋のパートで家計を支える強い人です.実はこの二人は,街子の親に結婚を反対され,かけおちして夫婦になった仲でした.二人の生活は決して裕福とは言えないものですし,喧嘩をすることもしばしば.それでも二人の間には確固たる愛があり,二人を結びつけているのです. 2巻で街子が妊娠してからは,物語が特に重厚になっていきます.雄二は幼いころに両親が離婚し,その後も父親の暴力を受けながら育った暗い過去を持ちます.そのため,自分が父親になることに対して強い不安を抱くのです. 本作には雄二と街子の他に,出版社の編集担当者や街子の両親などがサブキャラクターとして登場します.その中でも特に重要な人物が,雄二が憧れていた作家・畑中義人です.女癖が悪く,初登場時は嫌味なエロ親父として描かれるのですが,徐々に彼の悲しい過去が明らかになっていきます. それぞれの思いが錯交する中,街子の出産が間近に迫ります.そんな時,悪夢のような出来事が夫婦に襲いかかります.果たして,この物語が迎える結末は...!! |
雑感 |
「感動する4コマ漫画」 このフレーズに最も似合う作品が,「だって愛してる」だと思います.「泣ける」という言葉よりも「感動する」という言葉がしっくりきます.もちろん泣ける内容ではあるのですが,本作を読んで流す涙には,やるせない悲しみの涙とそれを乗り越えた嬉しさの涙があると思います.また,ストーリーが素晴らしいのはもちろんのこと,セリフのひとつひとつや背景にまで込められた表現力は圧巻です.私が本作を読んだ時には,「うわ~,うわ~」という感嘆が口をついて出ました.こんなことは,漫画を読んでいて初めての経験でした.むんこ先生は優れた脚本家であり,演出家でもあると思います.さらに,感動できる話の中にもギャグを入れることを忘れません.笑いと感動のバランスが非常によくとれています. 物語の中では登場人物の様々な過去が明らかになり,高校時代に雄二と街子が付き合い始めたことがわかります.しかし,当時クラスのアイドル的存在だった街子がなぜ不良の雄二を好きになったのかは明らかにされていません.もしかしたら,「人を好きになるのに理由など必要ない」という意味があるのかもしれません.最終巻のあとがきで,むんこ先生が次のような言葉を綴っています.
愛とは即ちエゴだと思います. エゴだと思っていないとしたら,それが一番のエゴだと思います. それでも,この言葉に嘘はないのです. 「だって愛してる」
私はまだまだ人生経験が乏しいので,おそらくむんこ先生のメッセージを全て受け止めることはできていないと思います.この先私がどんな人生を歩むのかはわかりませんが,これから何度もこの作品を読み返し,愛について考えたいと思います. |
小ネタ |
本作終了後に,続編となる「だってあいちてる」という作品が連載されました.畑中義人がメインキャラクターで,単行本の帯には『おっさん救済物語です。』と紹介されています. |
小ネタ2 |
「雄二」という名前の由来は,むんこ先生の初恋相手の名前だそうです.むんこ先生は雄二のキャラクターが好きになれなかったため,愛着を持たせるために初恋相手の名前にしたそうです. |
この作品が 好きなら! |
自虐の詩/業田良家(光文社,竹書房) |
同作者の作品 |
だから美代子です(竹書房) |
あなたもジンドゥーで無料ホームページを。 無料新規登録は https://jp.jimdo.com から