ロコ・モーション

作者:藤井理乃

巻数:2巻(完結)

出版社:芳文社

掲載誌:まんがタイム

発売日:2012/11/7~2014/5/7

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内容

 ローカル線を運行するわかば鉄道に入社したロコ.本作は新米車掌となった彼女の成長と,仲間やお客様との触れ合いを描いたハートフル4コマです.

 物語の冒頭では,ロコはまだ高校生でした.進路が決まらない中,鉄道が大好きな親友モコに影響を受けて,モコと同じ鉄道会社に就職することを決意します.ただしロコは高校を留年してしまい,ロコとモコが同じ職場で働くようになるのは1年後となるのです.

 ロコがわかば鉄道に入社してからは,一人前の車掌になるべく奮闘する様が描かれます.ロコは笑顔と元気があふれる,無邪気な性格です.そんな彼女でも,時に自分の無力さを痛感し,自らを責めることがあります.そんな時にロコを救ってくれるのは,会社の仲間やお客様,そして親友のモコ.人と人との繋がりが,じんわり温かく感じられる作品です.

雑感

 本作を読んで私が驚いたのは,業界人にしか分からないであろうディープなネタが非常に多いということです.実は私も鉄道関係の仕事をしており(車掌ではないです),鉄道業界ならではのあるあるネタには度々共感します.『自動起床装置を意識しすぎて起動音だけで起きる』というネタは,私の体験とまるっきり同じです.こうしたリアルなネタを描けるのは,藤井先生が車掌さんに詳しく取材をなさった結果なのだと思います.

 ロコとモコの関係も,本作の大きな魅力だと思います.ロコが入社した時には,モコは1年間の厳しい業務を積んで成長していました.ロコが同じ会社に入ってきて嬉しいけれど,ロコにも自分と同じように成長してもらいたくて,あえて厳しく接するモコ.その姿を見て,早く一人前になろうと意気込むロコ.学生の友情とは違う,大人の友情を感じます.

 鉄道事業者は,列車を安全かつ時間通りに走らせることが求められています.しかしこの両方を実現するのは容易ではなく,だからこそロコたち鉄道員の苦労があるのです.それに安全かつ時間通りの運行には,お客様の協力が不可欠なのだと思います.鉄道だけには限りませんが,公共の場では一人ひとりがマナーを守ることが大切ですよね.

小ネタ1

 本作の登場人物の名前は,鉄道の駅名や列車の愛称に由来します.その例外が,「丸山誠司」.彼の名前は鉄道好きで知られる漫画家の松山せいじ先生に由来します.

小ネタ2

 2巻p.81で,モコが発車1分前で運転室のボタンを押しそうになり,「ボタン押してたらアウトだった」と話しています.このボタンは電車のドアを閉めるボタンなのですが,発車時刻前に車掌がドアを閉めると「早閉め」という事故になります.さらに重大な事故が,停止信号が出ている状態でドアを閉める「赤閉め」です.

私が選ぶ

ザ・ベスト

1巻104ページ左

私が4コマで泣かされた,数少ないシーンの一つです.人と人との繋がりが希薄になっている今日だからこそ,胸に突き刺さります.

 この作品が好きなら!

路傍のミオ/小池恵子(竹書房)

ひかり!出発進行/水井麻紀子(タイム)