新・自虐の詩 ロボット小雪

作者:業田良家

巻数:1巻(完結)

出版社:竹書房

掲載誌:まんがくらぶ

発売日:2008/7/30

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内容

 本作の舞台は,ロボット技術が発達した近未来の世界です.人間は恋人ロボットを持つのが当たり前になり,本作のメインキャラクター・拓郎にも小雪という旧型の恋人ロボットがいました.拓郎は友人の広瀬が彼女にしているような最新型ロボットを羨ましく思いながらも,小雪に愛着を持って接していました.

 本作の鍵となるのは,「向こう岸」という世界の存在です.拓郎や広瀬たちが楽しい時を過ごす世界の隣には,「向こう岸」と呼ばれる別の世界があり,そこでは貧しい人々が劣悪な環境で過酷な労働を強いられているというのです.ただし拓郎達は,「向こう岸」は自分とは関係ない世界だと考えているようでした.

 しかしある日,広瀬の父親の会社が倒産してしまいます.財産を失くし,この世界で生活できなくなった広瀬家は,ついに「向こう岸」に行ってしまいます.そんな緊迫した状況の中,小雪の中で”心”が芽生え始めました.そして小雪は自らの心に従い,広瀬一家を救出すべく立ち上がります.

雑感

 申し上げます.この作品は鳥肌モノです.読めば世界観が変わるかもしれない,傑作です.

 この作品のテーマは,「格差社会」です.格差を生み出す社会システムに一石を投じる,作者の強いメッセージが込められています.…ですが,本作のテーマはそれだけではありません.

 皆さまは,上記の「内容」をご覧になって,どんな結末を想像しますか?小雪が広瀬一家を救出してハッピーエンド...そんなラストを思い描くのではないでしょうか?もちろんここでネタバレはしませんが,強烈な最終回であることを予告しておきます.業田先生が,おそらく最も伝えたかったことが,そこにあります.

 本作のタイトルには業田先生のヒット作である「自虐の詩」を冠していますが,「ロボット小雪」と本家の「自虐の詩」はストーリーの繋がりのない別作品です.「自虐の詩」は実写映画化しましたが,「ロボット小雪」も映画向きの作品です.ぜひ映画化してもらいたいものです.

私が選ぶ

ザ・ベスト

1巻181ページ

本作の最終回で,小雪の開発者である拓郎の母の胸中を表したシーンです.本当に心を持ったロボットができたらどうなるか?深く考えさせられます.