棺担ぎのクロ。~懐中旅話~

作者:きゆづきさとこ

巻数:7巻(完結)

出版社:芳文社

掲載誌:まんがタイムきらら

発売日:2006/9/27~2016/2/27


内容

 棺桶を担いだ旅人,クロの物語.クロは幼い頃魔女に呪いをかけられ,体が徐々に「黒い染み」に蝕まれているのです.魔女にコウモリの姿に変えられてしまったセンと共に,クロは魔女の呪いを解くために旅を続けます.

 旅の途中,クロは廃墟となった研究所の中でニジュク・サンジュと名乗る小さな双子に出会います.二人はこの研究所で造られた実験体だったのですが,純粋無垢な二人はそんなことは分からず,既に亡き者となった「はかせ」が来るのを待っていたのです.クロはそんな二人を外の世界に連れ出し,一緒に旅をすることに決めました.そしてこの選択は,クロの運命を大きく左右することになります.

 ここまでのストーリーは1巻の序盤も序盤です.この後クロは旅の途中で様々な人と出会い,足跡を残していきます.そして,本作に散りばめられた多数の謎・・・クロが棺桶を担いでいる理由,クロにかけられた呪いの正体,魔女が生まれた経緯・・・これらが少しずつ明らかになってゆきます.

雑感

 この作品ほど「芸術作品」という言葉が似合う4コマ作品は他にない.これは断言できます.ダークファンタジーという難しいジャンルに4コマ漫画で真正面から挑んだのは,少なくともきららではこの作品が最初です.もしかしたら4コマ漫画の歴史でも初めてかもしれません.そして現在まで,この作品に比肩するファンタジー4コマは現れていません.さらに本作の驚くべき点は,信じられないほど圧倒的な画力!一コマ一コマが絵画のようで,カラーイラストなんて美しすぎて心を奪われるほど.そしてなんと言っても,読者を夢中にさせる完成されたストーリー!謎を解くヒントとなる描写は序盤からたくさん出てきて,最初は意味が理解できないのですが,読み続けていくと「あ!これはあのときの!」という感じに謎が解けていくんです.さながら名作の推理小説を読んでいるようです.この作品を読んでいるときは,自分の脳がフル回転しているのがわかります.

 また,大筋のストーリーから離れた1話完結のお話も,色々考えさせられるものだったり,星新一のショートショート的なユーモアがあるものだったりでどれも面白いです.中でも印象に残っているのは,サンジュの「いっしょうゆるさないって なあに?」という問いに対するクロの答えですね.この話は4巻に収録されていますよ.

 

 きっと,この作品を最初に読む人は「他の4コマと全然雰囲気違う!あと絵むっちゃ綺麗! でもハナシが難しくてよく分かんない」と感じると思います.私も実際そんなものでした.意味深なセリフや描写は多いんですが,初見ではその意味が理解できないんですよね.しかし!物語が完結した今,これまで分からなかった謎は解かれました.ぜひ,最初から最後まで一気に(は無理だけどできるだけ短期間で)読んでみてください.そして感動の最終回を読んだら,もう一度読み返してみましょう「なんだこんなとこに答えがあるじゃないか!」と今まで気づかなかった伏線の意味に気づき,この作品の偉大さを改めて認識することになるでしょう.