箱入りドロップス

作者:津留崎優

巻数:6巻(完結)

出版社:芳文社

掲載誌:まんがタイムきらら

発売日:2012/4/26~2017/6/27

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内容

 一人暮らしの高校生・春日井陽一の隣に引っ越してきたのは,同い年の女の子・西森雫.雫はほとんど家の外に出たことがないという筋金入りの箱入り娘でしたが,とある事情で一人暮らしを始めることに.陽一は世間知らずの雫の世話役を任され,賑やかな高校生活をスタートさせます.雫にとっては何もかもが初めての経験となり,新しい発見に興奮する毎日が始まるのです.

 陽一と雫の友人として,クラスの女子の萌と純,そして男子生徒の相ノ木がメインで登場します.萌と純は可愛くて世間知らずの雫をイジって遊ぶ,という関係がすぐに出来上がります.一方,相ノ木は仲の良い女性陣に謎の対抗心を燃やし,陽一とつるんで盛り上がろうとするのです.男同士のやりとりが多く描かれるのは,きらら作品では非常に珍しいことです.そんな楽しい仲間たちに囲まれ,他人に怯えてばかりいた雫は少しずつ社交的に,そしてちょっぴり図太く成長していきます.

 陽一は雫に対して保護者感覚でいるつもりなのですが,雫を異性として全く意識していないわけではありません.天然な雫の思わせぶりな発言に,ドキマギすることもしばしば.さらに友人たちの間でも恋愛模様が進展していき,回を重ねるごとにラブコメ要素が多くなっていきます.

雑感

 KRコミックスの作品だけあって,女の子の可愛さが目を引きます.特に主人公の雫は,世間知らず・天然・清純という「守ってあげたいキャラ」です.『雫ちゃんマジ天使!』と感じる読者も多いことでしょう.ですが,本作が雫を愛でるだけの作品であれば,私がお気に入り作品として紹介することはなかったでしょう.私が本作に感じた大きな魅力は,男性キャラが活き活きと描かれているところです.

 そもそも,きらら作品には男性キャラが登場すること自体が少ないです.「あっちこっち」など男性キャラがメインで登場する作品もありますが,こうした作品で登場する男性は多くがイケメンキャラかヘタレキャラです.一方,本作に登場する陽一は顔が怖く,相ノ木は見た目が不良.この点だけでも他のきらら作品とは一線を画します.さらに,男子高校生らしいノリでふざけ合う二人が面白可笑しく描かれていて,同性の読者から見て親近感が湧きます.萌えポイントを押さえつつ,萌えと無関係のところで笑いを誘うスタイルが,最近のきらら作品にない魅力を生み出しています.

 さらに言えば,本作には読者に媚びるような表現がほとんど見られません.例えば,お風呂回や水着回は読者サービスの典型です.本作でそういったシーンというと,3巻の海に行く回と5巻の修学旅行の入浴シーンくらいです.それも不自然なサービスカットはありません.読者サービスに走る作品と比べて,本作の方が好感度が高いと私は感じます.

私が選ぶ

ザ・ベスト

2巻47ページ左

「水魚の交わり」と言えば,分かる人には分かりますね.陽一と相ノ木が楽しそうにバカをやっている場面です.本作のイメージが少し変わる瞬間でもあります. 

この作品が

好きなら!

さえずり少女、しんしん鎌倉/matoba(タイム)

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