No.1 レーカン! 瀬田ヒナコ/13巻(連載中)/タイム

 霊が見えるのが当たり前という霊感少女,天海.幽霊が苦手なクラスメートの井上はそんな天海につっかかっていきますが,次第に天海と打ち解けるようになります.本作は天海と井上,賑やかなクラスメート,そして愛嬌のある霊達が繰り広げるドタバタコメディーです.それに加えて1巻に1話位の頻度で感動的なエピソードもあり,それが本作の大きな魅力になっています.「ジューンブライドのエピソードは神回」というのは読者の共通認識ではないでしょうか?


No.2 カテゴリテリトリ 山東ユカ/6巻(完結)/少年画報社

 OLの弥生がアパートの自室で目を覚ますと,そこには見知らぬ男2人が寝ているのでした.なんとそこから,3人の奇妙な同居生活が始まるのです.いきなりエロ漫画のような展開なのですが,本作にそっち方面の要素は全くありません.本作はストーリー漫画ですが,この3人は恋愛関係に発展しませんし,どうにも話の展開が読めない変わった作品です.登場人物はそれぞれキャラが立っていて,特に弥生のダメダメな生活っぷりは面白いです.物語のラストはかなり意外な展開ですのでお楽しみに!


No.3 オトナのいろは あさのゆきこ/2巻(完結)/タイム

 気弱なサラリーマンの滝村は,書道教室を営む綾乃に出会います.滝村はその書道教室に通うことになり,綾乃から書道を教わりながら人間的にも成長していきます.そして次第に綾乃に想いを寄せるようになる滝村ですが,綾乃が秘密にしていた暗い過去を知ってしまいます... 書道というこれまでの4コマになかった題材を用いただけでなく,内容も深みのある作品に仕上がっていることが素晴らしいです.一つ残念なのは,1巻で読者をグイグイ惹きつけた勢いが2巻ではパワーダウンしてしまったことでしょうか.


No.4 独裁君 業田良家/1巻(完結)/小学館

 北の国の”あのお方”をモデルにした作品で,ユーモラスな表現をしつつ国家の実情を描き,その社会体制を批判しています.作品中盤からは周辺国の首脳をモデルにした人物も登場し,批判の対象が広がっていきます.番外編(非4コマ)と本編の最終回では真面目でシリアスな内容になり,一味違う衝撃を受けます.こうした風刺4コマは,今では希少な存在となっています.今は風刺作品が好まれない時代なのかもしれませんが,そんな中この作品を世に送り出した業田先生と小学館には賛辞を送りたいです.


No.5 なのな フォト ゴロー 森下裕美/4巻(完結)/双葉社

 社会に適合できず,誰からも相手にされない男,ゴロー.彼にとって唯一の心の支えは,アパートでこっそり飼っている猫の「フォト」.ある日ゴローは,フォトを連れて帰ろうとする「なのな」という女性に出会います... 「もう見ていられない」と思うほどダメなゴローの人生が他人事に思えず,読む手が止まりませんでした.そんなゴローにも少しずつ幸せが訪れるようになるのですが,その展開が嬉しい反面,作品のインパクトが薄れていく気がしてもどかしく思います.


No.6 えむの王国 中平凱/3巻(完結)/KR

 カスティーナ王国の王女シャルロットは,10歳の誕生日に衝撃の事実を知らされます.それは,この国の国民のほとんどがえむ(マゾ)であるということ.臣下や王までもが繰り広げるハードなえむ行為に,シャルロットはドン引きです.変態ギャグ漫画というフレーズがピッタリと当てはまる作品で,好みの分かれる作品だと思います.しかしギャグばかりではなく,えす気質の敵国との対立や,クーデター,スパイなどシリアスな要素も少なくありません.特に終盤はかなり真面目な展開となり,読んでいて驚きました.


No.7 ジンクホワイト 小泉真理/3巻(完結)/少年画報社・祥伝社

 美大を目指す真木が転入した高校で出会ったのは,口だけで絵のレベルが低い美術部員たち.真木は美術部に入らず,ハイレベルな画塾で絵の勉強を続けることにします.しかし美術部のナンパ男,和田だけは真木のレベルの高さを認め,真木と同じ画塾に入ることを決意します.美大受験をテーマにした4コマは数多くありますが,本作ではその内容がとにかくリアルで強く印象に残ります.「ゆるふわ」なんて言葉はどこにもありません.また,真木と和田の恋愛についても描かれており,最終回では意外な形で幕を閉じます.


No.8 健全恋愛ライフ こいずみまり/2巻(完結)/ぶんか社・祥伝社

 広告代理店に務めるマキは大学の後輩・和田に「泊めて」と頼まれ,そこからなし崩し的に同棲生活が始まるのでした.二人の関係が健全なのかどうかはさておき,このお話は決して”楽しい”ものではありません.おそらくマキは,自分の人生を楽しく生きようとしていないのです.そんなマキの生活に踏み込んでくるお調子者の和田,そしてかつての恋人との再会... 純愛ではないリアルな恋愛作品を楽しみたい方にオススメします.同時期に連載していた「ジンクホワイト」は,スターシスムによって登場人物が同じです.


No.9 ベルリンは鐘 ニャロメロン/7巻(完結)/秋田書店

 奇才・ニャロメロン先生が描く,「パルプンテ系無秩序4コマ」です.学校のチャイムとクリスマスのジングルベルとの間に生まれた子供が主人公という,全く意味不明な設定になっています.舞台としては,アニメ「おでんくん」の世界に近いでしょうか.設定も突飛なら,繰り出されるネタも突飛なものばかりです.シュールという言葉では言い表せないようなギャグばかりなのですが,間違いなく面白い作品だと思います.サブタイトルが4コマ目の下にあり,それによって2段オチになっているのも秀逸です.


No.10 ぼくの彼女はウエートレス 重野なおき/3巻(完結)/タイム

 人気4コマ漫画家,重野なおき先生の初期の作品で,微笑ましいカップルが主人公のコメディーです.喫茶店「With」で働く元気一杯の彼女と,頼りないけど実は有能なサラリーマンの彼氏.二人が恋人らしくイチャラブしている描写はありませんが,幸せな様子がとてもよく伝わってきます.最終巻では読者の予想を裏切ることなく,二人はハッピーエンドを迎えます.作品内には二人以外の登場人物のエピソードも多くあり,終盤には驚きの展開が飛び出します.


No.11 鉄仮面のイブキさん 市川和馬/3巻(完結)/タイム

 イブキさんは,見た目には表情が全く変わらないポーカーフェイス.でも本人が言うには,喜怒哀楽に溢れているのだとか.隣の席の喜多君は,そんなミステリアスなイブキさんの事が気になって仕方がありません.イブキさんと喜多君のやりとりで話が進んでいくシンプルな構成はテンポが良く,かなりハイレベルな作品です.表情には出ませんが,イブキさんが照れたり笑ったりしている様子が何となく伝わってきて,愛らしく感じます.作者の市川先生は,これからの活躍がとても期待できる方だと思います.


No.12 シュレディンガーの妻は元気か 中島沙帆子/2巻(完結)/竹書房

 典型的理系男子な夫&理系はサッパリな文系妻.デコボコ夫婦によるコメディ作品です.作者自身の実体験が元になっている部分が多いそうで,文系女子から見た理系男子の観察がテーマになっています.いつもマイペースで世間話についていけない.オカルト系には興味なし.一度スイッチが入ると,とことん極めないと気が済まない.そんな傍から見るとズレた理系男子の生態が,なんだか面白い.理系な人も文系な人も,それぞれ共感できるような「あるあるネタ」が満載です.


No.13 きょうのスー マツダユカ/3巻(完結)/双葉社

 住宅地に暮らすスズメのスー,そしてたくさんの鳥達の暮らしを描いた愛らしい作品です.一人遊びに興じるカラスやモテないキジバトなど,個性がいろいろな鳥達が登場します.この作品を読んでみると,現実でも鳥達はこんなことを考えているのかな,などと想像して和みます.しかし本作は,ただ鳥達が可愛いだけの作品ではなく,厳しい弱肉強食の世界をサラリと描いています.生き物にとって,弱肉強食は自然の掟であり当たり前のことなんですよね.鳥好きの方には是非とも読んで頂きたい作品です.


No.14 二人ぼっち 南ひろこ/2巻(完結)/日本文芸社

 二人暮らしの老夫婦の生活を描いたハートフル4コマです.表紙から優しい雰囲気が漂っていますね.この作品の内容をよく表していると思います.この二人は仲睦まじいおしどり夫婦で,4コマのネタも微笑ましいものがほとんどです.時にはちょっぴり"キュン"とくる話や思わず吹き出しそうになる面白ネタもあり,読者を飽きさせません.また,本作はネガティブ要素を一切含んでいないため,読むたびに心が安らぎます.この作品で描かれているのは,まさに理想の老後生活なのでしょうね.二人がとても幸せそうで,なんだかうらやましいです.


No.15 SUN×GIRL 30M先/3巻(完結)/ぱれっと

 南の島で暮らす少女,うな.彼女は動物と心を通わせる不思議な力を持つ一方,無口で気が弱い性格です.それでも大好きな幼馴染みのりょうがいつもそばにいて,うなは楽しい毎日を過ごしています.うなとりょうはカップル同然なのですが,りょうがあまりに朴念仁すぎて二人の仲はなかなか進展しません.友達や島の住人にからかわれて赤くなる二人に,ニヤニヤが止まりません.個人的に,うなのキャラクターはちょっとあざといかなと思う部分もありますが,決してあざといばかりの作品ではありません.また,島の雰囲気を感じさせる手の込んだ背景描写や構図は非常にハイレベルです.


No.16 きらきらきら 藤島じゅん/1巻(完結)/KR

 グータラな漫画家の鴉丸とアシスタントのあいしー,それに編集部の面々によるドタバタコメディーです.藤島先生の作品らしく,大きくデフォルメされたキャラクター,力強い線,勢いのあるギャグが特徴です.主人公の鴉丸は,藤島先生ご自身がモデルになっているようです.鴉丸の描いている漫画が,藤島先生の作品である「てんしの末裔」だったりします.ギャグ一辺倒な作品と思いきや,終盤では恋愛モードに突入し,最後はハッピーエンドを迎えます.なお,作中の鴉丸は男性なので,藤島先生も男性だろうと多くの読者が考えることでしょう.しかし,藤島先生は女性です.


No.17 まぐばぐ 東屋めめ/1巻(完結)/竹書房

 一人暮らしの高校生・佐藤ヒロシのもとに,人に擬態した新種の昆虫が届けられます.送り主は研究所に勤めるヒロシの姉で,ヒロシはこの昆虫の生態観察に付き合わされることになりました.この昆虫,見た目は妖精のように可愛いのですが,悪食な上に性格が悪く,いつもヒロシを困らせます.しかもヒロシの言葉を理解した上で嫌がらせをしているようなのです.けれどこの騒動のおかげで,クラスの美月さんとヒロシの仲が急接近!そして,昆虫たちにある変化が・・・!  本作のストーリーは割りとありがちなものだと思いますが,1巻完結作品としてとても読みやすい作品に仕上がっています.


No.18 初恋症候群 瀬戸口みづき/3巻(完結)/竹書房

 高校生の東吾は幼馴染みの瑠璃のことが好きで,将来結婚したいという願望までありました.ところが瑠璃に彼氏ができ,東吾の願望はあっさり打ち砕かれます.瑠璃の彼氏である津島はクールな社会人で,東吾ではとても敵わない相手…と思いきや,実は津島の本性は極度のビビリだったのです.恋人の瑠璃の前では余裕のある大人を演じていた津島ですが,東吾にその本性を知られてしまいます. 本作を読むと,東吾と津島のどちらの恋を応援すればいいのか迷ってしまうことでしょう.また,心の荒んだ教師や本能丸出しの会社員といった濃いキャラがいい味を出し,作品を盛り立てます.


No.19 パニクリぐらし☆ 藤凪かおる/4巻(完結)/タイム

 サラリーマンの楠一志は4人兄弟の長男.両親がいないため,一志が家族を支えなければなりません.しかし金銭的に厳しい上に個性派の弟と妹に振り回され,一志の毎日は大変です.さらに,一志は何かとツイてないのです.それでも,いつも賑やかな楠家は皆が幸せを感じられる日々を過ごしています.この4人に加えて,一志の同僚で世話焼きお姉さんのアキがメインキャラクター.本作はスタンダードなホームコメディーだと思いますが,その安定感は一級品です.ラストはめでたくハッピーエンドとなり,ホッとする読了感を得られます.


No.20 にゃんことカイザー 珠月まや/3巻(完結)/ぱれっと

 幼稚園に通う3人の女の子と,「バイオ犬」のカイザーの日常を描いたギャグ漫画です.カイザーはとにかく下ネタを連発し,幼稚園児にセクハラまがいの行動をとるダメ犬です.『幼稚園児にセクハラとか,条例的に大丈夫なの?』と少し心配してしまいますが,実際に女の子達が被害に遭うわけではありません.あくまでも本作はギャグ漫画ですし,被害を受けるのはいつもカイザーの方なのです.カイザーの下ネタはしょーもないものばかりなのですが,なんでも下ネタに繋げられるカイザーの発想力はお見事.なお,本作にはちょっぴり百合要素も入っています.


No.21 あさぎちゃんクライシス! 弓長九天/3巻(完結)/タイム

 あさぎは家庭教師の河野先生に勉強を教えてもらっているのですが,河野先生はマイペースで何を考えているのかさっぱり.いい人には違いないのですが,突飛な行動でいつもあさぎを振り回します.そんな河野先生を少しずつ意識してしまうあさぎの様子が,とても可愛らしいです.河野先生の大学の友人達もまた個性的です.特に楠田さんはスタイル抜群の美人ですが,アメフラシを捕まえて喜んだりと河野先生並に変わったお方.登場人物は基本的にいい人ばかりなので,読んでいると心が安らぎます.ただ,単行本に未収録の話があるのが残念.


No.22 くすりのマジョラム 鈴城芹/3巻(完結)/KR

 薬剤師の馬放ラム(26)は,魔法の薬を調合できる「魔女」でもあります.とはいえ,薬局で魔法の薬を売っているわけではないので,ラムが魔女であることはほとんど知られていません.ラムの正体を知る人たちは,自分の悩みを解決してもらうためにラムの薬を頼ってきますが,魔法の薬は万能ではないため思い通りには行きません.ラムの魔法はどこが現実的で,あまりファンタジー要素はありません.むしろ本作には,薬や健康に関する豆知識が豊富です.また,ラムと小学生男子が,まさかの恋愛関係に?というドキドキの展開もあります.


No.23 ラジオでGO! なぐも。/3巻(完結)/KR

 ラジオ番組のパーソナリティを務める,ちとせと沙絵.二人の番組は,リスナーからの投稿をもとに自由にしゃべりまくるというもの.本作は,そんな番組の舞台裏で繰り広げられるスタッフ達の賑やかな日々を描いた作品です.中でも沙絵とミキサーの藤田との恋愛要素は見どころの一つ.普段ラジオを聞かない読者でも楽しめる内容になっています.また,キャラクターの動きを表現したイラストはかなりレベルが高いです.掲載時には雑誌のハシラ部分を活用した「ハシラでGO!」というコーナーがありましたが,これは単行本にも収録されています.


No.24 となりのエロチカちゃん 後藤羽矢子/3巻(完結)/竹書房

 転校生の江口チカは,お色気フェロモンを放ちまくる女子高生.心は清楚な女の子なのですが,言動のひとつひとつが艶めかしく,周囲がちょっと引くレベルです.そしてもう一人のメインキャラクター,恩納ミサオは「女は二次元しか認めない.ただし声優は除外」という重度のオタク.最初は江口に対しても拒否反応を示していたのですが... 後藤羽矢子先生のエロネタはガチなイメージが強かったのですが,本作の場合はかなりソフトです.また,完全にギャグとしてエロネタを用いているので多くの読者が受け入れやすい作品になっていると思います.


No.25 となりのカワンチャさん 月見里中/1巻(完結)/KR

 頭に頭蓋骨を乗せた不思議な女の子,カワンチャさん.彼女の正体は,ネパールの病魔です.いつもは女子高生のさやかと仲良く過ごしていますが,怒るとお腹を痛くする呪いをかけます.カワンチャさんは言葉を話せませんが,それが強いキャラクター性を出しています.まんがタイムきららの初期に連載されていた作品で萌え要素を含みますが,それに特化した作品ではありません.さやかの貧乳ネタやおバカネタなど,萌え4コマではよく見かけるネタが多いものの,本作には独特の優しい雰囲気があると思います.月見里先生の作品の中で,私が最も好きな作品です.