「2巻乙」という言葉は,某ネット掲示板でよく目にする言葉です.その意味は,
きらら系列誌で連載している作品がコミックス2巻分で打ち切りとなることです.
これについては作品統計のレポートでも触れているのですが,きらら系列誌において2巻乙となる作品は非常に多いです.
そこで本レポートでは,雑誌での掲載順の推移から2巻乙となった作品の特徴を調べてみます.
対象作品は前回レポートと同様,2007年以降に連載がスタートした作品です.
なお,ここでは2巻完結となった作品について一様に「2巻乙」と呼んでいますが,2巻完結となった作品がすべて打ち切りによる終了だったとは限らないことを前置きしておきます.
2巻乙となった作品の掲載順には,いくつかの推移パターンがあるようです.
上の2つのグラフは,各作品が初掲載されてから打ち切りまでに掲載順が落ちている様子を表しています.
掲載順の下降は人気の下降を示していると考えられるので,次第に掲載順が落ちているのは自然なことでしょう.
左上のグラフに示した作品は掲載順が緩やかに減少していますが,右上のグラフに示した作品は連載開始直後から掲載順が急落し,後ろの方の掲載順に落ち着いています.
また,これらとは違ったパターンもあります.
左下のグラフに示した作品は,掲載順に大きな変動が見られません.
右下のグラフに示した作品は,連載回数が15回目くらいまでは上位で掲載されますが,その後順位が急落します.
他のグラフの作品を見ても,連載回数が15回目くらいで掲載順が一時的に上昇しているのが分かります.
実はこのタイミングは,コミックス第1巻が発売されるタイミングなのです.芳文社がコミックスの宣伝をするために,作品の掲載順を上げていると考えられます.
すると,右下のグラフの変動からは次のようなことが推測できます.
このグラフに示した作品は編集部からの期待が高く,当初から上位で連載を続けていた.その後単行本第1巻が発売されるが,その売れ行きが芳しくなかった.そのため編集部はこの作品を2巻で打ち切りにすることを決め,連載順も下位に落とした.
…もっともらしいシナリオではないでしょうか.
つまり,単行本第1巻の売上が作品の連載を続けるかどうかを左右していると推測できます.
このような連載順の推移パターンについて,雑誌ごとに違いがないか調べてみました.
そこで,きらら本誌,MAX,キャラットの作品に関して,それぞれ平均的な連載順の推移を出してみました.
なお,平均化する際に掲載回数の基準を新たに指定しました.
各作品がコミックス1巻の宣伝をされる時の連載回数を”第C回”と定義し,第C回を基準として掲載回数を揃えました.
これは,コミックス発売後の掲載順の変化に着目するためです.
上のグラフは,連載回数が第C+x回における掲載順の平均の推移を示しています.
2巻乙となった作品については,各誌とも掲載順は徐々に低下していくことが確認できます.また,きらら本誌とキャラットでは第C回に連載順のピークが見られますが,MAXでは掲載順のピークが第C+1回に位置します.
2巻乙作品と3巻以上に達した作品と比較すると,きらら本誌では第C+3回以降(単行本発売後)で両者の差が広がるのに対し,MAXとキャラットでは単行本発売前から両者の差が明確です.
このことから,MAXとキャラットに連載している作品は単行本が発売される前から,長期連載とするかどうかを判断されている可能性があります.
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