わたしのお嬢様

作者:樹るう

巻数:5巻(完結)

出版社:辰巳出版

掲載誌:COMIC CANDY TIME→COMIC桃姫→

    COMICペンギンセレブ

発売日:2006/4/20~2012/2/24

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内容

 物語の舞台は,ヴィクトリア朝ロンドン.貿易商で財を成したマーチ家で巻き起こるドタバタを描いた,「なんちゃってヴィクトリアンホームコメディ」(作者談)です.

 マーチ家の一人娘のメリーは,8歳にして株で大金を稼ぐ程の才女.ただし非常にませていて男勝りな性格が玉にキズ.そんなメリーの面倒を見るのが子守メイドのミリー.美人で性格も優しいのですが,ドジっ娘で服が破れるのは”お約束”.メリーの家庭教師にやってきたステア先生は,真面目で家族思いの大学生で,貧しい暮らしの弟達を支えています.

 この3人を中心に,マーチ家の周りでは様々な騒動が繰り広げられます.単行本には1巻ごとに「○○編」というサブタイトルが付いており,各巻でひとつのストーリーを1巻完結の形式でまとめています.基本的にドタバタコメディーなのですが,ミリーの出生の話などには時代背景も絡めたシリアスな内容も含まれています.こうした騒動の中で,ミリーはステア先生に恋心を抱くようになり,その思いは少しずつ大きくなっていきます.果たして,ミリーの思いは通じるのでしょうか?そして…衝撃のラスト!

雑感

 私にとって本作との出会いは非常に新鮮なものでした.ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にした設定もそうですが,1巻で1つの物語を綴るという構成が斬新だと感じたのです.こうした構成はシリーズ物の小説では一般的ですが,4コマ漫画ではとても珍しいと思います.実際に,漫画というより小説を読んでいる気分になります.

 本作の魅力として,ギャグとシリアスの配分が上手いという点が挙げられます.上の内容でも触れましたが,本作の背景には”身分の違い”に関係するシリアスな面があります.ただ,樹るう先生のキュートな絵柄でギャグ要素を押し出しているため,シリアス要素はかなり中和されています.全体としてドタバタコメディーの味を損なうことなく,隠し味としてシリアス分を効かせているといった感じでしょうか?このあたりの腕はさすが売れっ子漫画家ですね.

 そして!本作の最終話は本当に必見です!(ネタバレになるので内容は言えません)この最後は好みが分かれると思いますが,私はこの最終話を読んで「この作品を買ってよかった」と感じました.

小ネタ1

「わたしのお嬢様」最終巻には,もれなくドラマCDが付属されています.内容は4巻のほぼ全てと5巻の終盤の内容を編集したものです.ドラマCDが付属された分,本の値段は通常より高いですが,ファンにも作者にも嬉しいサービスだと思います.

小ネタ2

最終話で電話をかけているMr.マーチにご注目.作者の描き間違いに気づきますか?

この作品が

好きなら!

踊る!アントワネットさま/にしうら染(竹書房)